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安斎克己の悩み

主人公・燎平の友人には、とてつもなく大きな悩みを抱えた安斎克己がいた。

彼は経済的には恵まれた家に育ち、テニスでは中学・高校と名門に進んだ元関西ジュニアのチャンピオンだったが、自分はいつか「気が狂う」という恐怖に付きまとわれたかわいそうな人だった。

祖父と二人の兄がノイローゼを患った挙句に自殺…。

自分にも流れる忌まわしい血におびえ、燎平たちのお陰でテニスに復帰を果たしても、やはり恐怖に引き戻される。

その迫りくる恐ろしい感覚、そして悲し過ぎる結末…

燎平たち友人には、無念さを通り越して怒りにも似た感情が沸き起こったのではないかと想像できた。

宮本輝さんは、いくつかの小説の中でこの心の病について描いているが、もしかして、このような感覚を肌で知っているのだろうか?とさえ思ってしまった。
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佐野夏子

佐野夏子。主人公燎平が一目ぼれする女の子。

私もこの物語に描かれている夏子という女性について、美人はいいな~とつくづく思わされた。

芦屋の洋菓子店を経営している家に生まれて苦労知らずの夏子は、彫の深い顔立ちに緑がかった不思議な色の瞳。
そして天衣無縫な性格に自信たっぷりの態度。

燎平のみならず、いろいろな男性に恋をされている。

ただ、これがイコール彼女の幸せか?というと話は別問題である。

彼女が経験する恋愛は、決して自分にとっても周りにとっても幸せなものではなく、もしかしたら、今後の彼女自
身にとって本当の幸せを遠のかせるものであるかもしれない。

燎平のためらいがそう感じさせた。

ラストに見られる、この燎平の態度…他の方はどうみるだろうか?

テニス

この物語の魅力の一つに、テニスがある。

私自身がテニスをしているため、より身近なものに感じたのだが、宮本輝さんはテニスの精神性を実によく描いている。

私はテニスは精神力の戦いだと思っているが、これはきっと私がテニスしか知らないからで、きっとスポーツは本来、すべて肉体による技術の戦いに見えて実は精神の戦いなのだろう。

両親から与えられた体格と生まれ持っての運動神経…決して平等ではないこれらを使ってどのように上達していくのか、そして勝っていくのか。

物語の中で主人公も仲間たちももがく。

この様子が実にリアルで、私は何度も暑い日差しの中で自分もコートにいる感覚を味わった。そして苦手なものに向かっていく孤独な戦いの感覚も。

結果がどうであれ、その戦いの過程がすべてなのだとこの物語は私にも勇気をくれた。


青春小説

新設された大学に入学しテニス部に入った椎名燎平と、その友人たちが繰り広げる青春ドラマであり、彼らの若さゆえのひたむきさがまぶしいばかりの物語である。

そこには、何かに打ち込む情熱と恋、そして若者の手には有り余る悩みが鮮明に描かれている。

今から30年近く前に描かれたものではあるが、この小説には時代に負けない若者の輝きがある。ぜひ、それを感じて欲しい。

果される約束

留美子が十年前に見知らぬ少年から渡された「十年後に結婚を申し込むつもりです」という手紙。

この約束が現実のものとなるのか…ほぼ間違いない予想を抱きつつも、読んでいくうちに、留美子と俊国の心の近づく過程に引き込まれる。

きっと、留美子が三年もの間引きずった過去の恋愛の傷は、俊国の自分に対する十年越しの想いによって急速に癒されたことだろう。

何と反時代的な青年の恋だろう…とは思うが、その一方で、激しくはないけれど静かで強いこんな想い方をされるなんて、これ以上女冥利に尽きることはないな…と留美子が羨ましかった。

真冬の冷えた澄んだ空気の中で繰り広げられる自然界の営みと、優しい人々が果たす心の約束。そういったものをぜひ感じて欲しい。
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